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第4回―バッタンバン その2―

 バッタンバン若者の家の子どもたちは、学校に通ったり職業トレーニングに通ったり、大忙しだ。
子どもたちの学校見学に行った、というより親になったつもりで授業参観にいってみたのだが、教室に入ってみると若者の家の子どもの体格が他の子どもたちよりいいのだ。2年生のクラスに6年生がいるようなものなのだが、事実そのとおりで、若者の家の子どもたちの年齢が高いからなのだ。施設にくるまで学校に行けなかったわけなのだから、当然でもあるのだが、なんとなく居心地が悪そうだなと思えてならなかった。
職業トレーニングでは男の子は自動車関係、女の子は美容院、お菓子屋さん、縫製工場が多い。一日も早く自立するための実際的な選択になっている。タイとの国境の町ポイペトで美容院を開いた女の子を訪ねた。トタン板で囲ったわずか3畳ほどのスペースだが、20歳の彼女は誇らしげに仕事をしていた。
ところで、カンボジアの人口はおよそ1400万人いて、そのうち18歳未満の子どもは700万人。人口の半分は子どもたちということになるのだが、出生登録は22パーセントでしかない。これは『世界子供白書2005』による数字だが、統計に表れるのは出生登録された子どもだけなのだろうか。そうだとすると実際にはもっと数が多いことになるのだが……。
日本にいると5年に一度は国勢調査というものがあって、隅から隅まで行政単位の中に組み込まれるから人口とかも100パーセント近い正確な数字がでてくる。それが当たり前で生きていると、世界には出生登録もしない、また制度そのものもない国があるということが信じられない。
滞在している間に、自分たちが支援できる方法をみつけた。3人で話し合いを重ねて相談したわけでもなく、ほとんどがいっしょに同じことを考えていたようだ。それは子どもたちの里親になろうということだった。
日本を発つまで、いやカンボジアに着いてからも、そんなつもりは毛頭なかったのだから、我ながら驚く結論だった。私達の提案はもちろん喜んで受け止めてくれたが、全員を支援できるわけではない。私は17歳と12歳の男の子を選んだ。対面したときの彼らの驚きようは言葉では言いつくせないほど大きかった。
私が彼らに伝えたことは「金持ちの日本人が恵んでくれるとは思ってくれるな。私は貧乏な作家だが、自分の暮らしを変えるために支援する。一日300円の無駄遣いをやめて、そのお金を2人のために使う」そういったのだった。



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